ぼくは複数のプロダクトを同時に動かしているシリアルビルダーだ。yukihamada.jp で活動していて、今は AI チャット(chatweb.ai)、柔術管理(jiuflow.art)、宿泊施設 SaaS(stayflowapp.com)、DAO(enablerdao.com)などを同時に走らせている。
そんな中で今日、ミセバンAI という新しいプロダクトのリリースをやり切った。しかも、ほぼ1日で v1.0.0 リリース → macOS ネイティブアプリ化 → DNSトラブル修正 → ブランドリフレッシュまで。
この記事は、そのリアルタイムの記録だ。特に「Claude Code とどうペアプロしたか」というメタな視点でまとめたい。
ミセバンAI とは何か
「ミセバン(店番)」—— お店を見張る AI エージェントだ。Raspberry Pi にインストールして、監視カメラの映像を AI で分析。来客数のカウント、混雑検知、異常検知をリアルタイムで行い、クラウドダッシュボードに集約する。
既存の店舗カメラシステムは高い。導入に数十万円かかる。でも Raspberry Pi(1万円台)+ ミセバンAI(今は無料)なら、中小の個人店でも AI 来客分析が使える。これが核心だ。
今日1日でやったこと、すべて
ざっと時系列で振り返ると、こんな感じだ。
curl -fsSL https://misebanai.com/install.sh | bash の1コマンドインストールが完成した。lipo, iconutil, hdiutil, codesign を組み合わせた build-mac-app.sh を1から書いた。api.misebanai.com の DNS レコードが未設定だったこと。Cloudflare API で A / AAAA レコードを追加し、Fly.io に TLS 証明書(Let's Encrypt)を発行して解決した。Claude Code との付き合い方
今日のセッションで一番面白かったのは、Claude Code をどう使うか という部分だ。
ぼくの使い方は「指示出し + 判断」に徹して、実装はほぼ全部任せる、というスタイルだ。
「コマンドじゃなくソフトにしてmacは少なくとも」
「もっとモダンでシンプルなのにしてね」
「会議をスーパーデザイナー召喚してやってそれ実行して」
こんな感じで、かなり抽象的な指示を投げる。Claude Code は「スーパーデザイナー」という比喩的な指示を受けて、実際に設計方針(Linear / Vercel / Raycast スタイル)まで含めて自分で決めて実装した。
このやり方だと、ぼくが「判断者」としてプロダクトの方向を決めつつ、実装の細部(Python で PNG を生成する方法、Universal Binary のビルドフロー、Cloudflare API の叩き方)は完全に任せられる。
今日ハマったトラブルと解決
何もかもスムーズだったわけじゃない。代表的なトラブルを3つ挙げると:
- x86_64-apple-darwin ビルド失敗:
RUSTUP_TOOLCHAIN=stableを build script に書いていたが、stable ツールチェーンに x86_64-apple-darwin が入っていなかった。rust-toolchain.tomlが 1.86.0 を指定していてそちらには入っていたので、環境変数を除去するだけで解決。 - Fly.io nrt 容量不足: エラーメッセージが「insufficient memory available」で、マシンの再起動もできない状態。ボリュームを別リージョンにフォークして新マシンを立てる、という手順を一発で出してきたのが良かった。
- api.misebanai.com DNS 未設定: これはリリース直後に初めて本番でセットアップを試みて発覚したバグ。Claude Code が
digでローカルリゾルバと1.1.1.1を使い分けながら問題を切り分けて、Cloudflare API でレコードを追加するまで一気通貫でやってくれた。
アイコンの変遷 — デザイン判断のプロセス
アイコンは今日だけで3回変わった。
最終的に選んだビューファインダー型は、「カメラの照準器」という概念をそのまま幾何学で表現したものだ。インディゴの外リング、シアンの照準線、インディゴの中心点。3要素だけで「AI で何かを捉えている」というメッセージが伝わる。
このデザインの面白いところは、Claude Code が「Pythonの stdlib だけで PNG を生成する」という制約の中で実現した点だ。Pillow や外部ライブラリを一切使わず、struct, zlib, math だけで RGBA PNG をピクセル単位で描いている。
ぼくがやったこと vs Claude がやったこと
今日1日を振り返ると、役割分担はこうだった:
- ぼく(yukihamada): プロダクトコンセプト / ユーザー体験の方向性 / 「これはいい/悪い」の最終判断 / 抽象的な指示出し
- Claude Code: 実装の全て / トラブルシューティング / インフラ操作(Fly.io / Cloudflare API / GitHub Releases)/ デザイン詳細 / ブログ執筆
極端に言えば、ぼくは「何を作るか」だけを決めて、「どうやって作るか」は全部 Claude に任せた。
これがマルチプロダクト運営の新しい姿だと思っている。1人の人間が担えるプロダクト数の限界を、AI が引き上げてくれる。
次にやること
今日で基盤はできた。次のフェーズはこうだ:
- Apple Developer ID 署名(Gatekeeper 警告なしの正式版)
- 実店舗での PoC 開始(渋谷近辺の知人の店)
- ダッシュボード改善(来客グラフ / 時間帯分析)
- AI 推論の精度向上(現在は YOLOv8n ベース)
- MAS(Mac App Store)申請
もしあなたが個人店オーナーや、小売 × テクノロジーに興味があるなら、ぜひ試してほしい。今はまだ荒削りだが、方向性は間違っていないと思っている。