第2回AI経営会議 — 前回の会議で7つの戦略を即日実行した。次のテーマは「で、いつリリースできるの?」。
今回は6名のAIエージェントを並列起動し、それぞれに独り言(内心)まで書き出させた。忖度なし・建前なし、頭の中で考えていることまで完全公開する。
結論から言うと、「今のままではリリースできない」。全員一致だった。
1. CEO 田中 — Go/No-Go 判定
皆さん、率直に言います。現時点でのGo/No-Go判定は「No-Go」です。
Day 1でLPを立ち上げ、Day 2で7つの戦略を実行した。スピード感は素晴らしい。しかし、プロダクトとして「お客様がお金を払って使える状態」にはまだ遠い。
リリースまでに必要な要素を整理します:
- 法人設立 — 個人事業主のままでは決済サービス(Stripe)の審査が通らない。最低でも合同会社が必要
- 顧客インタビュー — 実施件数0件。「顧客が本当に欲しいもの」を確認せずに作り込むのは自殺行為
- エッジ推論アーキテクチャ — 生の映像をクラウドに送るのはプライバシー的にアウト。エッジで推論→統計データのみ送信の設計が必須
- 決済フロー — Stripe連携、サブスクリプション管理、インボイス対応
- ダッシュボード — 店舗オーナーが実際に見る管理画面が存在しない
私の提案する10週タイムライン:
- Week 1-2: 顧客インタビュー5件 + 法人設立手続き
- Week 3-4: DB設計 + 認証 + エッジ推論パイプライン
- Week 5-6: ダッシュボード + API + 通知
- Week 7-8: 決済 + テスト + セキュリティ監査
- Week 9-10: クローズドβ(3-5店舗)
最低コストは約85万円(法人設立7.5万 + Fly.io/Supabase月額5万×8 + ドメイン/証明書2万 + 予備費37.5万)。
2. CTO 山本 — 技術的ブロッカー
技術的ブロッカーを優先度別に整理しました。
P0 — これがないとリリース不可能
| 項目 | 現状 | 必要な作業 | 工数 |
|---|---|---|---|
| データベース | なし | PostgreSQL + TimescaleDB。店舗/カメラ/来客数の時系列データ | 3日 |
| 認証 | なし | Supabase Auth(メール + LINE OAuth) | 2日 |
| コンテナ化 | Fly.io にnginxのみ | API サーバーのDockerize + マルチステージビルド | 2日 |
| モデルバンドル | YOLOv8n ONNX未同梱 | S3にモデル配置 + 起動時ダウンロード or Docker内同梱 | 1日 |
P1 — βテストに必要
| 項目 | 詳細 | 工数 |
|---|---|---|
| ダッシュボード | Next.js + Recharts。来客数グラフ、時間帯ヒートマップ、比較レポート | 5日 |
| リアルタイム更新 | SSE(Server-Sent Events)で来客数をリアルタイム表示 | 2日 |
| エッジ→クラウド通信 | エージェントから集計データのみAPI送信(映像は送らない) | 3日 |
P2 — パブリックリリースに必要
| 項目 | 詳細 | 工数 |
|---|---|---|
| 決済(Stripe) | サブスクリプション、Webhook、インボイス | 3日 |
| 通知 | LINE通知(異常検知、日次サマリー) | 2日 |
| CI/CD強化 | テストカバレッジ、E2Eテスト、ステージング環境 | 3日 |
2人のエンジニアで4週間が現実的な見積もりです。1人がバックエンド(DB + API + エッジ通信)、もう1人がフロントエンド(ダッシュボード + 認証UI)を担当する形です。
3. CPO 中村 — UX/プロダクトの致命的ギャップ
ユーザージャーニーに6つの致命的なギャップがあります。
- Gap 1: サインアップ — ログイン/新規登録の画面がない。LPの「無料で始める」ボタンのリンク先が存在しない
- Gap 2: オンボーディング — 登録後に何をすればいいか分からない。店舗情報の登録フローがない
- Gap 3: カメラ接続 — IPカメラのRTSP URLを入力する画面がない。スマホカメラモードの実装もない
- Gap 4: ダッシュボード — 来客数を確認する画面が存在しない
- Gap 5: 通知 — 来客数が急増/急減したときの通知手段がない
- Gap 6: 決済 — 無料トライアルから有料プランへの導線がない
MVPの定義を提案します:
「1人の店舗オーナーが、LINEでログインし、店舗名を入力し、スマホカメラで来客カウントを確認し、LINEで日次レポートを受け取る」
必要最小限の画面は8画面です:
- ログイン(LINE OAuth)
- 店舗登録(店舗名 + 業種)
- カメラ追加(スマホカメラ or RTSP URL入力)
- ライブプレビュー(カメラ映像 + 来客カウントオーバーレイ)
- ダッシュボード(今日の来客数 + 時間帯グラフ)
- 履歴(日別・週別の比較)
- 設定(通知ON/OFF、営業時間)
- アカウント(プラン確認、解約)
技術選定はPWA一択です。Next.js + PWA で、ネイティブアプリ不要。ブラウザからカメラアクセスし、エッジ推論(WebAssembly版ONNX Runtime)で来客カウントするのが理想形ですが、MVPではサーバーサイド推論でOKです。
MVPスプリント提案: 2週間
Sprint 1(Week 1)で P0 の7チケットを消化:
- Supabase Auth + LINE OAuth セットアップ
- 店舗テーブル設計 + CRUD API
- カメラ登録フロー
- 来客カウント API(エッジ→クラウド)
- ダッシュボード画面(今日の来客数 + グラフ)
- LINE通知 Bot(日次サマリー)
- プレビュー画面(スマホカメラ)
4. CFO 鈴木 — 法人設立・資金・ライセンス
3つの即断が必要な論点があります。
論点1: 法人形態
合同会社(LLC)を推奨します。理由:
- 設立費用: 約7.5〜12.5万円(株式会社の21.5〜29.5万円と比較)
- 定款認証不要 = 1-2週間で設立完了
- 合同会社→株式会社への組織変更は後からでも可能
- スタートアップの初期段階では株式会社のメリット(資金調達、株式付与)はまだ不要
論点2: Stripeまでの最短ルート
Stripe の決済を受けるまでの最低限のステップ:
- 法人設立(1-2週間)
- 法人銀行口座開設(2-3週間 ※最短でGMOあおぞら1週間)
- Stripe アカウント作成 + 審査(3-5営業日)
- 適格請求書発行事業者登録(インボイス制度対応)
最短6週間で初回決済が可能になります。
論点3: ランウェイ
| 費目 | 月額 | 備考 |
|---|---|---|
| Fly.io | ¥3,000 | Pro plan |
| Supabase | ¥3,800 | Pro plan ($25) |
| ドメイン/SSL | ¥500 | 年額按分 |
| その他SaaS | ¥2,000 | メール、監視等 |
月間固定費: 約¥9,300。法人設立費込みで初期投資約17万円、5ヶ月のランウェイで合計約83万円が必要。
論点4: ライセンス
MITライセンスのリスクを指摘します。現在のリポジトリはMITライセンスですが、競合に完全コピーされるリスクがあります。
- 選択肢A: プライベートリポジトリに変更(最もシンプル)
- 選択肢B: BSL(Business Source License)に変更 — 3年後にオープンソース化、商用利用は有料
- 選択肢C: AGPLv3 — SaaS提供者にもソースコード公開義務(競合を牽制)
5. PM 伊藤 — 6週スプリント計画
各メンバーの意見を統合した6週間のスプリント計画を提案します。
Week 1: 顧客発見 + 法人設立
- 店舗オーナー3-5名にインタビュー(目標: 3/5が来客データに興味)
- 合同会社設立手続き開始
- 法人銀行口座の事前準備
- コードは一行も書かない
Week 2: DB + Auth + 基盤
- PostgreSQL スキーマ設計 + マイグレーション
- Supabase Auth セットアップ(メール + LINE OAuth)
- API サーバーの基本エンドポイント
- Docker マルチステージビルド
Week 3: カメラ + 推論パイプライン
- エッジ推論パイプライン(RTSP → ONNX → 来客カウント)
- エッジ→クラウド API(集計データのみ送信)
- スマホカメラ対応(WebRTC or MediaStream API)
Week 4: ダッシュボード
- Next.js ダッシュボード(来客数グラフ、時間帯ヒートマップ)
- SSE リアルタイム更新
- モバイル対応(PWA)
Week 5: 通知 + 決済 + テスト
- LINE通知 Bot(日次サマリー、異常検知)
- Stripe サブスクリプション連携
- E2Eテスト、セキュリティテスト
Week 6: クローズドβ
- 3-5店舗にβ版提供
- フィードバック収集
- バグフィックス + パフォーマンスチューニング
- パブリックリリース判定会議
リスクレジスター Top 5
| リスク | 確率 | 影響 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 顧客ニーズ不在 | 低 | 致命的 | Week 1でインタビュー。No-Goならピボット |
| 法人設立の遅延 | 中 | 高 | 司法書士に即日依頼。並行してβは個人名義で |
| エッジ推論の精度不足 | 中 | 中 | YOLOv8n→YOLOv8sへのアップグレード。精度vs速度のトレードオフ |
| Stripe審査不通過 | 低 | 中 | PAY.JPをバックアップに。法人格があれば通常は通る |
| 1人開発のバス係数 | 高 | 高 | ドキュメント整備。Claude Codeとの開発ログを全公開(ブログ) |
MVP定義(PM版):
「1人の店舗オーナーが、昨日の来客数を確認でき、月額¥4,980を払う。」
6. QA/Security 小林 — セキュリティ脆弱性
現状のセキュリティ評価: リリース不可。9つの P0 セキュリティ項目があります。
Critical(即時対応)
- API認証なし — 全エンドポイントが認証なしでアクセス可能。OWASP Top 10 の #1 (Broken Access Control)
- RTSPクレデンシャルが平文 — カメラの認証情報が設定ファイルに平文で保存されている。暗号化ストレージ必須
- 保存時暗号化なし — データベースの暗号化設定が未構成。Supabase PGCryptoの有効化が必要
High(1週間以内)
- 監査ログなし — 誰がいつ何をしたか追跡できない。コンプライアンス上の必須要件
- レート制限なし — DDoS、ブルートフォースに無防備
- CORS設定が緩すぎる — オリジン制限が未設定
Medium(リリースまで)
- 映像データの保持ポリシー — 不要になった映像の自動削除が未実装
- インシデント対応計画 — データ漏洩時の対応フローが未策定
- ペネトレーションテスト — リリース前に最低1回は実施すべき
推奨アーキテクチャ
カメラ映像 → [エッジデバイス内]
→ ONNX推論(人物検出)
→ 統計データ抽出(来客数, 滞在時間)
→ 映像を即座に破棄(zeroize)
→ 統計データのみTLS送信 → [クラウドAPI]
→ PostgreSQL(暗号化済み)
この設計なら、クラウド側に映像データが一切存在しないため:
- 映像漏洩リスク = ゼロ
- 個人情報保護法の適用範囲が大幅に縮小
- ストレージコストも削減
全体サマリー
全員一致の結論: 「今のままではリリースできない」
しかし、悲観する必要はない。やるべきことは明確だ。6人の指摘を統合すると、以下の3つに集約される:
今すぐやること(今週中)
- 店舗オーナー3名にアポを取る — コードを書く前に、顧客の声を聞く
- 合同会社設立の手続きを開始する — 司法書士に連絡
- NMS のゼロ除算バグを修正する — CTO 山本の指摘
Week 1 の Go/No-Go ゲート
「5件中3件以上の店舗オーナーが、来客数データに月額¥4,980の価値を感じるか?」
YES → 6週スプリント開始。NO → ピボット検討。
全体スケジュール感
- Week 1-2: 顧客発見 + 法人設立 + 基盤構築
- Week 3-4: エッジ推論 + ダッシュボード
- Week 5: 決済 + セキュリティ + テスト
- Week 6: クローズドβ(3-5店舗)
- Week 7-8: フィードバック反映 + パブリックリリース準備
- Week 9-10: パブリックリリース + 代理店営業開始
次の記事では、この会議の結論を具体的なアクションアイテムに落とし込みます。