ブログ一覧へ戻る

前回の記事で、6名のAIエージェントが「リリースに何が必要か」を独り言付きで議論した。

本記事では、その議論を10のアクションアイテムに集約し、6週間のスプリント計画Go/No-Go ゲートを定義する。

No-Go
現時点のリリース判定
6週間
クローズドβまでの最短期間
¥83万
リリースまでの概算コスト

全員一致の結論

「現状は"技術デモ"であり"プロダクト"ではない。ユーザーがサインアップして、来客数を確認し、お金を払うまでの動線が一つも存在しない。」 — CEO 田中

しかし全員が「やるべきことは明確で、6週間あればクローズドβに到達できる」という点でも一致している。

10のアクションアイテム

Action #1 / Critical
顧客インタビュー 5件を実施する

コードを1行も書く前に、店舗オーナーの声を聞く。「来客データに月額¥4,980の価値を感じるか」を直接確認する。

  • 非誘導質問で聞く(「来客数が分かったら嬉しいですか?」ではなく「経営で一番困っていることは?」)
  • 成功基準: 5件中3件以上が来客データに言及 → GO
  • 3段階リクルート: 知人紹介 → 商店街 → Webスクレイピング
担当: CEO / 創業者 Week 1
Action #2 / Critical
合同会社(LLC)を設立する

Stripe決済、法人銀行口座、個人情報取扱事業者としての信用、すべての前提条件。

  • 合同会社を選択(設立費 ¥7.5-12.5万、1-2週間で完了)
  • PMF確認後に株式会社への組織変更を検討(約¥10万、2-3週間)
  • 法人銀行口座は GMOあおぞらネット銀行で最短1週間
担当: CFO / 創業者 Week 1-2
Action #3 / Critical
NMS ゼロ除算バグを修正する

AI推論のNon-Maximum Suppression(NMS)処理で、バウンディングボックスの面積が0になった場合にゼロ除算が発生する可能性がある。

  • crates/ai/src/lib.rs の IoU 計算にガード条件を追加
  • 面積が0の場合は IoU = 0 として扱う
  • テストケースを追加して再発防止
担当: CTO / エンジニア 今週中
Action #4 / High
データベース + 認証基盤を構築する

プロダクトの根幹。データを保存する場所と、ユーザーを識別する仕組みがない。

  • PostgreSQL + TimescaleDB(来客数の時系列データ最適化)
  • Supabase Auth(メール + LINE OAuth)
  • テーブル設計: stores, cameras, visitor_counts, users
  • API エンドポイント: CRUD + 来客数集計
担当: CTO / エンジニア Week 2
Action #5 / High
エッジ推論アーキテクチャを実装する

「映像をクラウドに送らない」がプライバシー戦略の根幹。エッジで推論→統計データのみ送信。

  • エッジ: カメラ映像 → ONNX推論 → 来客カウント → 映像即時破棄(zeroize)
  • クラウド: 統計データのみ受信 → PostgreSQL に保存
  • 通信: TLS暗号化 + API認証トークン
担当: CTO / エンジニア Week 3
Action #6 / High
ダッシュボード(MVP 8画面)を構築する

店舗オーナーが実際に操作する画面。PWA(Progressive Web App)として構築し、ネイティブアプリ不要にする。

  • ログイン(LINE OAuth)
  • 店舗登録 → カメラ追加 → ライブプレビュー
  • ダッシュボード(来客数グラフ + 時間帯ヒートマップ)
  • 履歴 → 設定 → アカウント
  • 技術: Next.js + Recharts + SSE リアルタイム更新
担当: CPO / エンジニア Week 4
Action #7 / Security
9つのP0セキュリティ項目を修正する

API認証なし、RTSPクレデンシャル平文保存、保存時暗号化なし — 現状は脆弱性だらけ。

  • 即時: API認証(JWT)、RTSPクレデンシャル暗号化(zeroize crate)
  • 1週間以内: 監査ログ、レート制限、CORS設定
  • リリースまで: 映像データ保持ポリシー、インシデント対応計画
  • ONNXモデルのハッシュ検証(改ざん防止)
担当: QA/Security Week 2-5
Action #8 / Strategic
Stripe 決済 + インボイス対応を構築する

法人設立 → 銀行口座 → Stripe審査 → 決済開始。最短6週間のクリティカルパス。

  • Stripe Billing: サブスクリプション管理
  • Webhook: 支払い成功/失敗の処理
  • 適格請求書発行事業者登録(インボイス制度)
  • 無料トライアル → 有料プランの導線
担当: CFO + CTO Week 5
Action #9 / Strategic
ライセンスを AGPLv3 に変更する

MIT ライセンスでは競合にコード丸ごとコピーされるリスクがある。AGPLv3 なら SaaS 提供者にもソースコード公開義務が生じ、単純コピーでの競合を防止できる。

  • 「オープンソースへのコミットメント」は維持しつつ、ビジネスを守る
  • BSL(3年後にオープンソース化)も選択肢として検討
  • 変更前に既存コントリビューターへの通知(現状は自分だけ)
担当: CFO / 創業者 Week 1
Action #10 / Strategic
LINE通知 Bot を実装する

ダッシュボードを毎日開く店舗オーナーは少ない。LINEで日次サマリーと異常検知を通知し、習慣化を促す。

  • 日次サマリー: 昨日の来客数、前週比、ピーク時間帯
  • 異常検知: 来客数が通常の2倍以上 or 半分以下の場合に即時通知
  • LINE Messaging API + Webhook
担当: CPO / エンジニア Week 5

6週スプリント計画

期間 テーマ アウトプット
Week 1 顧客発見 + 法人設立 インタビュー5件完了、合同会社設立手続き開始、ライセンス変更
GATE: 5件中3件以上が来客データに興味 → GO / それ以外 → ピボット検討
Week 2 基盤構築 PostgreSQL + Auth + API基本エンドポイント + Docker
Week 3 推論パイプライン エッジ推論→クラウドAPI通信、スマホカメラ対応
Week 4 ダッシュボード Next.js PWA 8画面、SSEリアルタイム、モバイル対応
Week 5 決済 + 通知 + セキュリティ Stripe連携、LINE Bot、セキュリティ修正、E2Eテスト
Week 6 クローズドβ 3-5店舗にβ版提供、フィードバック収集、バグフィックス
GATE: β店舗の2/3以上が継続利用 → パブリックリリース準備開始

Go/No-Go ゲート

Week 1 終了時に以下を判定する:

「5件の店舗インタビューで、3件以上が来客数データに月額¥4,980の価値を感じるか?」

YES → 6週スプリント開始(Week 2からコーディング)

NO → ピボット検討会議を開催(防犯特化 / 店員行動分析 / 商品棚分析)

MVP 定義

「1人の店舗オーナーが、昨日の来客数を確認でき、月額¥4,980を払う。」

これ以上でもこれ以下でもない。この1文が実現できればMVPは完成。

撤退ライン

以下のいずれかに該当した場合、ピボットまたは撤退を検討する

次のステップ

この記事を書き終えた時点で、やるべきことは1つだけ。

店舗オーナーに電話する。

コードを書くのは、その後だ。