第3回AI経営会議 — 1つのプロダクトに全ベットする時代は終わった。VCがポートフォリオを組むように、ゼロイチのフェーズでも複数プロダクトを同時に走らせる。
今回は6名のAIエージェント(元Meta AI天才エンジニア、インディーハッカー、Growth Hackerを含む)を並列起動し、それぞれに内心(独り言)まで書き出させた。忖度なし・建前なし、頭の中で考えていることまで完全公開する。
結論から言うと、「全会一致 — 条件付きGo。5プロダクト同時開発、8週間。」
1. CEO 田中 — ポートフォリオ戦略とショットガン・アプローチ
皆さん、率直に言います。MisebanAI単体で勝負するのは戦略的にリスクが高い。今日は「同時多発プロダクトリリース」について議論します。
前提は3つです:
- AI開発前提 — 全プロダクトがAIをコアに持つこと
- 共通基盤で高速量産 — 認証・決済・分析基盤を共通化し、新プロダクトの立ち上げコストを極限まで下げる
- 当たったものに集中投資する「ショットガン・アプローチ」 — 5発撃って、当たった弾に全リソースを注ぐ
5プロダクト同時開発、8週間タイムライン。Week 4でGo/No-Goの中間判定。Week 8で集中投資先を決定。
タイムラインの概要:
- Week 0: 共通基盤の構築(これが完成しないと何も始まらない)
- Week 1-4: 5プロダクトのLP作成 + MVPビルド + 初期トラクション計測
- Week 4: Go/No-Go中間判定 — スコアカードで機械的に判断
- Week 5-8: 上位2-3プロダクトに集中、残りはメンテナンスモードか撤退
2. 天才エンジニア 高橋 — 8つのプロダクト案と選定
8つのプロダクト案を持ってきました。それぞれのTAM(Total Addressable Market)、技術的実現性、差別化ポイントを整理しています。
1. MisebanAI(既存) — 店舗カメラAI分析
既存のIPカメラ映像からAIが来客数・滞在時間・動線を分析。エッジ推論で映像をクラウドに送らないプライバシー設計。小規模店舗向け。既にLP・コードベースが存在。
2. MenuAI — 写真1枚から多言語メニュー自動生成
料理の写真を撮るだけで、英語・中国語・韓国語のメニューを自動生成。GPT-4Vによる料理認識 + テンプレートエンジン。インバウンド需要の爆増に対応。飲食店のペインポイントが明確。
3. KuchiKomi Lens — レビュー集約 + AI返信生成
Google Maps、食べログ、Retty、ホットペッパーの全レビューを一元管理。AI が返信文を生成し、ネガティブレビューにも適切に対応。星評価のトレンド分析ダッシュボード付き。
4. ZenShot — EC商品写真AI加工
EC商品写真をAIで背景除去 + 自動補正 + バリエーション生成。Shopify/BASEプラグイン。TAMが最も広い。EC事業者全体がターゲット。remove.bg + Canvaのキラー。月額たった¥980で無制限加工。
5. YomuYomu — 文書要約AI
「ChatGPTでよくない?」 — 差別化が困難。汎用LLMラッパーは即座にコモディティ化する。却下。
6. Voice Karte — 接客会話リアルタイムスコアリング
接客中の会話をWhisperでリアルタイム文字起こし + sentiment analysis。接客品質をスコア化し、改善ポイントを自動フィードバック。飲食・小売・美容院向け。
7. KanbanCam — 看板・サイネージAIスコアリング
看板やサイネージの写真をアップロードすると、AIが視認性・色彩バランス・文字の読みやすさをスコアリング。改善提案つき。デザイナー不要で看板を最適化。
8. SnapReceipt — レシートOCR + 仕訳自動化
レシートを撮影するだけでOCR + 勘定科目の自動仕訳。freee/マネーフォワード連携。個人事業主・フリーランスの確定申告の苦痛を解消。
Top 3 推薦ランキング
| 順位 | プロダクト | 理由 | TAM規模 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ZenShot | TAM最大。SMBの痛みが明確。技術的差別化が容易。月額¥980で爆発的普及が狙える | 数百万事業者 |
| 2位 | KuchiKomi Lens | レビュー管理は飲食店の慢性的ペイン。複数プラットフォーム一元管理の需要は確実 | 約60万飲食店 |
| 3位 | KanbanCam | ニッチだが競合ゼロ。看板業者・商店街との相性が良い。商工会議所ルートで営業可能 | 約30万店舗 |
最終推薦: MisebanAI(既存)+ ZenShot + KuchiKomi Lens + KanbanCam + MenuAI の5本立て。YomuYomuは却下。Voice KarteとSnapReceiptはバッチ2に回す。
3. 天才エンジニア 渡辺 — 72時間MVP方法論
僕の方法論はシンプルです。「72時間でMVPを市場に投げる」。それだけ。
Day 1 — LPだけ作る。コードは1行も書かない。
- Astroで1枚のLPを作る。所要時間: 4時間
- ヒーローセクション + 3つの機能説明 + 料金 + CTAボタン
- CTAは「無料で始める」→ ウェイトリスト登録フォーム(Google Forms or Tally)
- Twitter/X広告を¥5,000分回す。インプレッション1万を目標
- この日の指標: LP CVR(コンバージョン率)
Day 2 — コア機能1つだけ実装。デザインは後。
- ZenShotなら「画像アップロード → 背景除去 → ダウンロード」の1機能だけ
- UIはTailwind UIのコピペで十分。美しさより動くことが正義
- バックエンドはCloudflare Workers + Rembg API。15分で構築可能
- ログイン不要。メールアドレスだけ取得して無料で使わせる
Day 3 — Product Huntに出す。Twitter/Xで「作った」と言う。
- Product Huntの投稿を準備(英語LP必須)
- Twitter/Xで開発過程をスレッドで公開。「72時間で作ったAIツール」系のバズを狙う
- Hacker Newsの Show HN に投稿
- IndieHackersコミュニティにシェア
Day 4以降 — データを見て続けるか殺すかを判断。
- LP CVRが2%以上 → Go。機能を追加してMVPを育てる
- LP CVRが1%以下 → Kill。即座に次のプロダクトへ移行
- 1-2%のグレーゾーン → LPのコピーを変えてもう3日だけ試す
5プロダクト並列ビルドの具体的スケジュール
| 日程 | やること | 判定基準 |
|---|---|---|
| Week 1 | 5つのLP作成 + Twitter/X広告開始 | 各LPのCVR計測 |
| Week 2 | CVR上位3つのMVP実装 | アクティブユーザー数 |
| Week 3 | Product Hunt + SNSローンチ | 初速のサインアップ数 |
| Week 4 | Go/No-Goスコアカード判定 | 有料転換率 |
4. CTO 山本 — 共通基盤とMonorepo設計
渡辺の72時間MVP方法論は素晴らしい。ただし、それを5プロダクトで実現するには共通基盤が絶対に必要です。共通基盤なしの5プロダクト並列は技術的負債の量産工場になります。
Monorepo構成案
products/
├── common/
│ ├── common-auth/ # JWT + magic link + LINE OAuth
│ ├── common-billing/ # Stripe subscription + webhook
│ ├── common-ai/ # LLM provider abstraction (OpenAI, Anthropic, local)
│ ├── common-analytics/ # event tracking + scorecard metrics
│ └── common-server/ # Axum boilerplate + middleware + error handling
├── miseban-ai/ # 店舗カメラAI分析
├── zenshot/ # EC商品写真AI加工
├── kuchikomi-lens/ # レビュー集約 + AI返信
├── kanban-cam/ # 看板AIスコアリング
└── menu-ai/ # 多言語メニュー生成
create-product.sh — 15分スキャフォールド
新プロダクトを立ち上げるスクリプトを作ります。実行すると15分で以下が自動セットアップされます:
- Axumサーバーのボイラープレート(ヘルスチェック、CORS、エラーハンドリング済み)
- 認証ミドルウェア(common-auth連携)
- Stripe Subscription連携(common-billing)
- アナリティクスイベントトラッキング(common-analytics)
- CI/CDパイプライン(GitHub Actions: test → build → deploy)
- Astro LP テンプレート
- Fly.io デプロイ設定
フェーズ別タイムライン
| フェーズ | 期間 | 内容 | アウトプット |
|---|---|---|---|
| Phase 0 | 1週間 | 共通基盤構築(auth, billing, analytics, server, AI) | create-product.sh が動作する状態 |
| Phase 1 | 4週間 | 週1プロダクトずつビルド。LP → MVP → ローンチ | 5プロダクトが稼働 |
| Phase 2 | 1週間 | スコアカード判定 → リソース集中 | Top 2-3に絞り込み |
技術選定
- バックエンド: Rust(Axum)for 重量級プロダクト、Cloudflare Workers for 軽量級
- フロントエンド: Next.js for ダッシュボード、Astro for LP
- データベース: Supabase(PostgreSQL)— 全プロダクト共通
- AI: common-aiクレートでプロバイダ抽象化(OpenAI, Anthropic, ローカル推論)
- デプロイ: Fly.io(Rust)+ Cloudflare Pages(LP/フロント)+ Cloudflare Workers(軽量API)
1プロダクト追加の月額コスト増はわずか¥3,100です(Fly.io追加インスタンス¥2,000 + Cloudflare Workers¥600 + ドメイン¥500/月按分)。共通基盤のおかげで、認証・決済・分析のコストは共有されます。
5. CFO 鈴木 — ポートフォリオ理論と財務分析
数字で話します。
ポートフォリオ確率計算
- 1プロダクトの成功確率: 15%(Y Combinator統計ベース)
- 1プロダクト全賭けの成功率: 15%
- 5プロダクト同時の成功率: 1 - (0.85)^5 = 55.6%
- 成功確率の向上倍率: 3.7倍
もちろん、5プロダクトの成功が完全に独立ではない(共通基盤の障害は全体に影響する)ので、実際は45-50%程度と見るのが妥当です。それでも15%の3倍。
予算配分
| 費目 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| Phase 0 共通基盤 | ¥50,000 | Fly.io, Supabase, ドメイン5つ, SSL |
| Phase 1 LP + 広告 | ¥75,000 | 5プロダクト × ¥15,000(LP制作 + Twitter広告) |
| Phase 1 MVP開発 | ¥100,000 | API利用料(OpenAI, Rembg等)、追加インフラ |
| 予備費 | ¥75,000 | 予想外のAPI使用量増、追加広告費 |
| バッチ1 合計 | ¥300,000 | |
| 勝者集中投資リザーブ | ¥700,000 | Phase 2でTop 2-3に投下 |
| トータル予算 | ¥1,000,000 |
¥100万トータル。バッチ1に¥30万、勝者に¥70万をリザーブ。¥70万は「当たったプロダクトに全額投下」するための弾です。当たらなければ使わない。
法人化のタイミング
MRR(月次経常収益)が¥50,000を超えてから法人化で十分です。理由:
- 合同会社設立費: ¥75,000 — 売上ゼロの段階で払うのは早い
- 個人事業主のままでもStripeの決済は受けられる(要確認だが、日本では個人事業主でもStripe利用可能)
- 法人口座開設に2-3週間かかる — 今始めても間に合わない
- MRR ¥5万 = 約10-50顧客(プロダクトによる) = PMFの兆候
3つの条件
- 週次KPIレビュー必須 — 各プロダクトのCVR、サインアップ数、アクティブユーザー数を毎週レビュー
- 共通基盤を先に完成させること — Phase 0のスキップは認めない
- Month 3(Week 12)で集中判断を下すこと — ダラダラ5つ続けない。Top 1-2に絞る
6. Growth Hacker 伊藤 — バリデーション指標とトラクション戦略
渡辺の72時間MVPと組み合わせるバリデーション指標を定義します。感覚ではなく数字で判断するためのフレームワークです。
Go/No-Goスコアカード(72時間計測)
| 指標 | Kill(撤退) | グレーゾーン | Go(続行) |
|---|---|---|---|
| LP CVR | < 1% | 1-2% | > 2% |
| 週間ウェイトリスト登録 | < 10件 | 10-50件 | > 50件 |
| SNS言及数 | < 5件 | 5-20件 | > 20件 |
| 有料転換率(Week 4以降) | < 1% | 1-3% | > 3% |
判定ルール: 4指標のうち3つ以上がGoならGo。2つ以上がKillならKill。それ以外はグレーゾーン(LPのコピーを変えて追加3日テスト)。
トラクションチャネル(日本SMB向け)
- Twitter/X — 開発過程をスレッドで公開。「72時間で作ったAIツール」系バズを狙う。ビルドインパブリックの文脈で毎日投稿。ハッシュタグ: #個人開発 #AIツール #作ってみた
- Product Hunt — 英語LP必須。ZenShotは海外展開の可能性があるため、Asia finalistのバッジを取りにいく
- note.com — 日本語SEO。「AI × 業務効率化」「EC 商品写真 AI」などのロングテールキーワードで記事を量産。各プロダクトのHowTo記事を5本ずつ
- 商工会議所 — オフラインチャネル。デモ機を持って行って実演。KanbanCamは特に相性が良い(商店街の看板改善提案に直結)
- LINE公式アカウント — SMBオーナーの生活線。週1で「AI活用Tips」を配信。クーポン + AI分析レポートのサンプルを添付
Product Huntローンチ戦略
- ローンチ日: 火曜朝9時(PST)= 日本時間 水曜 午前2時。火曜ローンチが最も競合が少ない
- Maker comment: 3つ準備。(1) プロダクトの背景ストーリー (2) 技術的なこだわり (3) 今後のロードマップ
- Hunter: 10人のHunterに事前連絡。フォロワー数1000以上のHunterをリストアップ
- Teaser: 3日前からTwitter/Xでteaser tweet。「Coming soon on Product Hunt」の画像投稿
- 初速: ローンチ後4時間で20 upvoteが目標。これを超えればホームページのトップ10に入る
プロダクト別チャネル戦略
| プロダクト | 主要チャネル | 副チャネル | バズ角度 |
|---|---|---|---|
| MisebanAI | 商工会議所 + LINE | note.com | 「AIが店番してくれる」 |
| ZenShot | Product Hunt + Twitter/X | IndieHackers | 「remove.bgキラー、月額¥980で無制限」 |
| KuchiKomi Lens | Twitter/X + note.com | 食べログ Advent Calendar | 「悪いレビューにAIが神対応」 |
| KanbanCam | 商工会議所 | Twitter/X | 「看板の点数、AIがつけます」 |
| MenuAI | Twitter/X + LINE | インバウンド系メディア | 「写真撮るだけで英語メニュー完成」 |
7. 最終投票 — 全員の判定
6エージェント全員の最終判定を一覧にします。
「条件付きGo。5プロダクト同時開発。ただし共通基盤が完成してから。」
「Go。ただしPhase 0を絶対に省略しないこと。」
「Go。ZenShotを最優先で。TAMが桁違い。」
「Go!でも最初の1週間はLPだけ。コードは書くな。」
「条件付きGo。¥30万キャップ厳守。Week 4で数字が出なければ撤退。」
「Go。ただしTwitter/Xでのバズ戦略なしにローンチするな。」
全体サマリー
全会一致 — 条件付きGo。5プロダクト同時開発、8週間。
6エージェント全員が「Go」。ただし全員が条件を付けた。条件を統合すると、以下の5つに集約される。
5つの必須条件
- Phase 0(共通基盤)を省略しない — CTO山本の鉄則。create-product.shが動く状態にしてから各プロダクトのビルドに入る
- LPファースト — 渡辺の72時間MVP方法論。コードを書く前にLPのCVRを計測。Phase 0と並行してLPは先行公開
- ¥30万キャップ — CFO鈴木の予算管理。バッチ1は¥30万以内。勝者に¥70万をリザーブ
- Week 4で機械的判定 — スコアカードのKill/Go基準に従う。感情で判断しない
- Twitter/X戦略必須 — 伊藤のGrowth戦略。LP公開と同時にSNS展開。バズなきローンチは禁止
5プロダクト一覧(優先順)
- ZenShot — EC商品写真AI加工(¥980/月)★ 最優先
- MisebanAI — 店舗カメラAI分析(¥4,980/月)既存
- KuchiKomi Lens — レビュー集約 + AI返信(¥2,980/月)
- KanbanCam — 看板AIスコアリング(¥1,480/月)
- MenuAI — 多言語メニュー自動生成(¥1,980/月)
8週間タイムライン
- Week 0: 共通基盤構築 + 5つのLP先行公開 + Twitter/X開始
- Week 1-2: CVR上位3プロダクトのMVP実装
- Week 3: Product Hunt + SNSローンチ
- Week 4: Go/No-Go中間判定(スコアカード)
- Week 5-6: 上位2-3に集中。機能追加 + 有料化
- Week 7-8: 本格ローンチ + 集中投資先決定
「打率を上げるな、打席数を増やせ」 — 渡辺 勇気
次の記事では、この会議の結論を具体的なアクションアイテムとWeek 0の実行計画に落とし込みます。