前回の記事で、チーム全員が「マルチプロダクト戦略(ショットガンアプローチ)」の是非を議論した。
本記事では、その議論を8つの意思決定に集約し、5プロダクト同時開発の8週スプリント計画とGo/No-Goゲートを定義する。
全員一致の結論
「1プロダクトに全賭けするリスクより、5発同時に撃って当たりを見極める方がスタートアップとして合理的。ただし共通基盤なしの5並列は自殺行為。Phase 0の1週間が生命線。」 — CTO 山本
全員が「条件付きGo」で一致。条件とは、Phase 0で共通基盤を確実に構築すること、そしてWeek 4のスコアカード判定で冷酷に勝者を選ぶことの2点。
8つの意思決定
Phase 0で1週間かけてMonorepo共通基盤を構築する。5プロダクトが同じ認証・課金・AI・分析基盤を共有することで、1プロダクトあたりの立ち上げコストを劇的に削減する。
common-auth— 認証・ユーザー管理共通モジュールcommon-billing— Stripe課金・プラン管理common-ai— AI推論パイプライン共通化common-analytics— イベント計測・ダッシュボード基盤create-product.shで15分スキャフォールド
候補の中から市場規模・実装難易度・差別化要因を評価し、以下の5プロダクトを同時開発対象として確定した。
- MisebanAI — 既存カメラAI来客分析(改善継続)
- ZenShot — EC出品者向けAI商品撮影(TAM最大、最優先)
- KuchiKomi Lens — 口コミ分析AIダッシュボード
- KanbanCam — 製造業向けカンバン方式AI管理
- SnapReceipt — レシート撮影→自動経費精算
YomuYomuは却下(市場が小さく、差別化が困難と判断)。
各プロダクトのランディングページ(LP)を先行公開し、市場の反応を検証してからコードを書く。CVR 2%以上を開発Goの条件とする。
- 72時間MVPパターン: Day1 LP公開 → Day2 コア機能実装 → Day3 ローンチ
- LP段階でメールアドレス収集、ウェイトリスト形成
- コード着手はLP検証後 — 作ってから売るのではなく、売れることを確認してから作る
毎週月曜日にスコアカードレビューを実施。感情ではなくデータで判断する。
- LP CVR — ランディングページのコンバージョン率
- 週間登録数 — 新規サインアップ数
- SNS言及数 — Twitter/X、はてブ等での言及
- 有料転換率 — 無料→有料ユーザーの転換率
Kill条件: CVR <1%、週間登録 <10 — この数字を下回ったプロダクトは即座に凍結検討。
各プロダクトの開発過程をTwitter/Xでリアルタイム公開し、「作ってみた」系のバズを狙う。ビルドインパブリック戦略。
- 開発過程のスクリーンショット・動画をリアルタイムで投稿
- 「AIで○○を作ってみた」フォーマットでバズを狙う
- Product Huntは英語LP準備して火曜AM9:00(PST)にローンチ
- はてなブックマーク、Zenn、Qiitaでの技術記事も並行展開
バッチ1の5プロダクトには¥30万上限を設定。1プロダクトあたり¥6万。残りの¥70万は勝者プロダクトへの集中投資用にリザーブする。
- 1プロダクトあたり¥6万(インフラ + API + ドメイン + 広告費)
- ¥70万は勝者プロダクトのスケール投資に集中
- 法人化はMRR ¥5万超えてから検討(それまでは個人事業主で運用)
- 予算超過は即座にCFOがアラートを出す
Week 4時点でスコアカード評価を実施。上位2プロダクトに集中し、下位は凍結する。感情を排して数字で判断する。
- 集中判断基準:
- アクティベーション率 >20%
- リテンション 7日 >30%
- 有料ユーザー >5人
上記を2つ以上満たすプロダクトが「勝者」。満たさないプロダクトは凍結し、リソースを勝者に集中投下する。
ZenShotは全プロダクト中TAM(Total Addressable Market)が最大。EC出品者全員がターゲットであり、市場規模は圧倒的。
- Shopify / BASEプラグインとして展開
- ¥980/月のフリーミアム(無料枠: 月10枚、有料: 無制限)
- Phase 1 Week 1で最初にビルド開始
- EC出品者コミュニティへの初期マーケティングを同時展開
8週スプリント計画
| Week | Phase | フォーカス | デリバラブル |
|---|---|---|---|
| W1 | Phase 0 | 共通基盤構築 | Monorepo + common crates + create-product.sh |
| W2 | Phase 1 | ZenShot | LP + Core MVP + Product Hunt |
| W3 | Phase 1 | KuchiKomi Lens | LP + Core MVP + SNS campaign |
| W4 | Phase 1 | KanbanCam + SnapReceipt | LP + Core MVP x 2 |
| W5 | Phase 1 | MisebanAI改善 | エッジ推論 + Dashboard |
| GATE: スコアカード判定 — 上位2プロダクトに集中、他は凍結 | |||
| W6 | Phase 2 | スコアカード判定 | Go/No-Go → Top 2に集中 |
| W7 | Buffer | 勝者プロダクト強化 | 有料機能 + Onboarding |
| W8 | Buffer | スケール準備 | Marketing + Sales pipeline |
Week 4 Go/No-Go ゲート
Week 4終了時に全プロダクトのスコアカードを評価する:
判定者: CEO + CFO
上位2プロダクトに集中 — リソース・予算・マーケティングを勝者に全振り
下位プロダクトは凍結 — コードはアーカイブ、ドメイン・インフラは停止
MVP定義
各プロダクトのMVP = LP + コア機能1つ + Stripe課金。それ以上は作らない。
72時間で出せないMVPは、MVPではない。Day1にLPを公開し、Day2にコア機能を1つだけ実装し、Day3にローンチする。フィーチャーを追加したい衝動と戦え。
撤退ライン
以下のいずれかに該当した場合、戦略全体の見直しを行う
- 全プロダクトのCVR 1%未満が2週連続
- 8週間で有料ユーザー0人
- 月間バーンレートが¥15万を超過
次のステップ
8つの意思決定は出揃った。8週間のタイムラインも引いた。あとは実行するだけ。
Week 1の成果物は「共通基盤」と「create-product.sh」。この2つが完成すれば、5プロダクトの同時開発マシンが動き出す。
次の記事では、共通基盤の設計とcreate-product.shの全貌を公開する。
次の記事: 共通基盤の設計とcreate-product.shの全貌