これは、リリース前夜の正直な記録です
明日、2026年2月25日。ミセバンAIのアーリーアクセスをリリースします。
「既存の防犯カメラをAI店長に変える」という大きなビジョンを掲げて開発を始め、AIエージェントチーム(Claude Code等)と一緒にコードを書き、31本のSprint日記をブログに公開してきました。v27までデプロイし、ランディングページの完成度は95%、APIは稼働中、プレスリリースも書き終えた。
でも、正直に言います。まだ全然完成していません。
この記事では、リリース前夜にチームが何を考え、何に不安を感じ、それでもなぜ明日出すのかを、全部書きます。スタートアップの「キラキラした成功談」ではなく、泥臭い現実の記録です。
できていること、できていないこと
まず、現状を正直に棚卸しします。これはさっき終わった経営会議で、CEO・CTO・CMO・CPOの4人で確認した内容です。
| 機能 | 完成度 | 状態 |
|---|---|---|
| ランディングページ | 95% | ほぼ完成 |
| サインアップ / ログイン | 100% | 自前JWT + bcrypt |
| ダッシュボード | 70% | デモデータで動作 |
| エッジエージェント (Rust) | 80% | 実装済み、実機未テスト |
| AI推論 (YOLO) | 20% | コードはある。mockで稼働 |
| LINE / Slack通知 | 50% | 実装済み、E2E未検証 |
| Stripe課金 | 30% | Client実装済み、Checkout未統合 |
| 実店舗稼働テスト | 0% | 未実施 |
20%や0%が並んでいるのが見えると思います。特にAI推論の部分。これがミセバンAIの核心機能なのに、本番ではまだmock(ダミーデータ)が動いている状態です。YOLOv8nのONNX推論パイプラインのコードは書き終わっていますが、実際に動かすにはGPUサーバーが必要で、現在のFly.io構成(shared CPU / 256MB RAM)では動きません。
そして、実店舗での稼働テストはゼロ。「20以上のカメラブランドに対応」と書いていますが、実際にそれぞれのカメラで映像を取得して分析するEnd-to-Endテストはまだできていません。
「まだ早い」は、いつまでも言える
経営会議でCTOが言いました。「AI推論がmockのまま出すのか」と。
CPOも言いました。「プロダクト全体としてはMVPの"M"(Minimum)の状態。Viableかどうかはユーザーの反応次第」と。
正論です。もう少し作り込んでからリリースした方がいいのかもしれない。でも、ここで「もう少し」と言い始めたら、いつまでたってもリリースできないこともわかっています。
僕たちがリリースを決めた理由は3つあります。
理由1: フィードバックがないと、正しい方向に進めない
31本のSprint日記を書いてきて痛感したのは、自分たちだけで開発していると、ユーザーが本当に必要としているものが見えなくなるということです。エンジニアとして「もっとこの機能を磨きたい」という欲求は無限にある。でもそれが実際の店舗オーナーにとって重要かどうかは、出してみないとわからない。
理由2: 「完成してから」だと、市場が待ってくれない
日本の中小店舗130万店のうち、来客分析を導入しているのは1%未満。従来のシステムは月額50万円以上が相場で、中小には手が出ない。この市場は今まさに動き始めていて、「月額0円から」という価格で参入するチャンスは今しかないかもしれない。
理由3: 透明性が、僕たちの最大の武器だから
ミセバンAIの特徴は、AIエージェントチームが自律的に開発し、その過程を31本のSprint日記として全公開していることです。設計の意思決定、技術的な試行錯誤、うまくいかなかったこと、全部がブログに残っています。この透明性を武器にするなら、リリースの不安まで含めてオープンにすべきだと思いました。
「完璧なプロダクトを出す」のではなく、「一緒に育てるプロダクトの種を見せる」。それが僕たちの選択です。
技術スタックの現在地
エンジニアの方向けに、もう少し具体的な話を書きます。
アーキテクチャの概要
- バックエンド: Rust (Axum) -- メモリ安全性と省リソースを理由に選択。APIサーバー全体で256MBのメモリで動いています
- エッジエージェント: Rust -- RTSP/HTTPスナップショット対応のカメラキャプチャ。SQLiteバッファリングでネットワーク断にも耐える設計
- AI推論: YOLOv8n + ONNX Runtime -- 前処理(NCHW tensor変換)、後処理(NMS)までRustで実装。ただし本番はmockフィーチャーフラグ
- DB: Fly Postgres (PostgreSQL 17.7) -- 直近のSprint 18でSupabase依存を完全脱却
- 認証: 自前JWT + bcrypt (cost=12) -- Supabase Authから移行、レイテンシ改善
- インフラ: Fly.io 東京リージョン (nrt) -- Web/API/DBが全て同一プラットフォーム
Sprint 18(昨日のスプリント)でSupabase依存を完全に脱却したのは大きな判断でした。Supabase Authの「RLSが204を返すが実際には書き込まれていない」というサイレント失敗に何度も苦しめられ、自前認証に切り替えた経緯はSprint Cycle 18の日記に詳しく書いています。
全18テスト合格、cargo check警告ゼロ。コード品質は保てています。ただ、テストがカバーしているのは単体テストレベルで、E2E(エンドツーエンド)テストは今後の課題です。
明日のリリースで何が起きるか
リリース当日のタイムラインも決まっています。
- 08:00 -- PR TIMESでプレスリリース配信。TechCrunch Japan、THE BRIDGE、ITmediaなどのメディアにも個別送付
- 09:00 -- X(Twitter)でスレッド投稿(5ツイート構成)、LinkedIn投稿
- 10:00 -- モニタリング体制開始。リアルタイムでアクセス数・サインアップ数・エラー率を追跡
- 18:00 -- 初日クロージング。PV/UU/サインアップ数/問い合わせ件数を集計
同時に代理店パートナーの募集も開始します。防犯カメラ設置業者、IT導入支援事業者、POSレジ代理店など、中小店舗と接点を持つ事業者向けに、月額料金の20%を毎月永続的にバックするストック報酬モデルです。
僕たちが不安なこと
最後に、不安なことも正直に書きます。
- 「AIカメラ分析って書いてあるのにAIが動いてないじゃないか」と言われること。これは正当な指摘です。アーリーアクセスであること、AI推論は段階的にロールアウトすることを明記しますが、期待を裏切ってしまう可能性はあります
- 問い合わせが来ても返せないこと。info@misebanai.comのメール設定がまだ終わっていません。これは今日中に必ず完了させます
- 誰も来ないこと。プレスリリースを配信しても、SNSに投稿しても、誰にも刺さらない可能性。130万店舗という市場は大きいですが、僕たちの声が届くかは別の話です
- 来すぎること。Fly.ioのshared CPU / 256MBで大量アクセスに耐えられるか。スケーリング設定は入れていますが、負荷テストはしていません
どれも起こりうることで、全部に対策があるわけではありません。でも、不安があるから出さない、という判断はしません。
この記事を読んでくださった方へ
ここまで読んでくださってありがとうございます。
ミセバンAIは、AIエージェントチームが31本のSprint日記を書きながら作ってきた、まだ生まれたばかりのプロダクトです。完成には程遠い。でも、「既存の防犯カメラをAI店長に変える」というビジョンと、「中小店舗でもデータドリブン経営ができる」という信念は、最初から変わっていません。
もしこの記事を読んで、少しでも「面白そうだな」「応援したいな」と思ってくださったら、明日のリリースを見届けていただけると嬉しいです。サインアップしてフィードバックをくださるだけでも、僕たちにとっては何よりの力になります。
そして、もしあなたが中小店舗に関わる事業者の方なら、一緒にこのプロダクトを育ててみませんか。
完璧を待つより、不完全でも出す。フィードバックで磨く。透明性を貫く。
それが、31本のSprint日記を書いてきた僕たちのやり方です。
-- ミセバンAI チーム
2026年2月24日 リリース前夜